11月25日、第21回社会保障審議会年金部会が開催され、基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了、在職老齢年金制度の見直し、標準報酬月額の上限引上げに関する議論が行われました。
次のような案が示され、委員からは、在職老齢年金の見直しと標準報酬月額の上限引上げに関する案に対して賛成意見が多く出ました。
【基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了】
●早期終了の背景・必要性
・基礎年金(1階)の給付調整は、過去30年の状況を投影した経済前提では、30年以上にわたり続き、その水準は長期にわたって低下する見込み。これにより、将来においては、厚生年金の受給者を含めた年金額が低下するとともに、所得再分配機能が低下(低所得層ほど年金額が低下)
・今後継続的な賃金や物価の上昇も想定される中、年金制度の持続可能性を確保しつつ、将来の公的年金全体の給付水準の向上を図る観点から、基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)の調整期間を一致させることにより、公的年金全体としてマクロ経済スライドによる給付調整をできる限り早期に終了させ、年金額が賃金や物価に連動して伸びるようにしていくことが必要
●見直しの方向性
・国民年金と厚生年金それぞれの財政均衡を維持した上で、報酬比例部分(2階)のマクロ経済スライドを継続し、基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)の調整期間を一致させることで、公的年金全体として給付調整を早期に終了させる
※ 基礎年金の給付調整の早期終了により、調整終了後の年金水準は、ほぼすべての厚生年金受給者で上昇する見込み。
一方、報酬比例部分(2階)の調整期間が現行制度よりも長くなることにより、この期間中に厚生年金を受給する者は、一時的に年金水準が低下
※ 将来の基礎年金水準が上昇する結果、現行制度と比べて国庫負担が増加。一方、増加が始まるのは基礎年金のマクロ経済スライド調整終了後(過去30年投影ケースで2036年)であることも踏まえ、将来的な財源の確保が必要
・そのため、基礎年金拠出金の算定方法を、現行の被保険者数の人数割に加え、積立金も勘案して計算する仕組みに変更する
【在職老齢年金制度の見直し】
●見直しの意義
・在職老齢年金制度が高齢者の就業意欲を削ぎ、さらなる労働参加を妨げている例も存在していることを踏まえ、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業を抑制しない、働き方に中立的な仕組みとする観点から、在職老齢年金制度の見直しを検討
●見直しの方向性
・案1:在職老齢年金制度の撤廃
→ 保険料を拠出された方に対し、それに見合う給付を行う年金制度の原則を重視
・案2:支給停止の基準額を71万円に引上げ
→ 同一企業における勤続年数の長い労働者が、現役期に近い働き方を続けた場合の賃金に加え一定以上の厚生年金加入期間に基づく年金収入を得ても支給停止とならないように基準額を見直す
・案3:支給停止の基準額を62万円に引上げ
→ 近年の60歳代高齢者の平均賃金の上昇傾向を踏まえ、平均的な収入を得る50歳代の労働者が、60歳代で賃金の低下を経ることなく働き続けた場合の賃金に加え一定以上の厚生年金加入期間に基づく年金収入を得ても支給停止とならないように基準額を見直す
【標準報酬月額の上限引上げ】
●見直しの意義
・上限等級を追加した場合には、新たな上限等級に該当する者の報酬比例部分が増加するとともに保険料収入が増加し、これが給付に反映されるまでの間の積立金の運用益が増加することにより、厚生年金受給者全体の将来の給付水準も上昇する(所得再分配機能の強化につながる)など、高齢期の経済基盤の安定、所得保障・再分配機能の強化につながる
●見直しの方向性
・令和2年9月の上限引上げを経ても上限等級に多くの者が該当している状態が継続し、上限該当者は負担能力に対して相対的に軽い保険料負担となっている中、今後、賃上げが継続すると見込んだ場合に、負担能力に応じた負担を求めるとともに、将来の給付も増やすことができるようにする観点から、現行ルールの見直しを検討する
・具体的には、男女ともに上限等級に該当する者が最頻値とならないように上限等級を見直すとともに、健康保険法の改定ルールを参考に、上限等級に該当する者が占める割合に着目して等級を追加することができるルールへの見直しを検討する
詳細は、下記リンク先にてご確認ください。
第21回社会保障審議会年金部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_20241125.html